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ホモ・サピエンスの15万年 連続体の人類生態史 古澤拓郎

ホモ・サピエンスの15万年 連続体の人類生態史を読了。

 生命科学から文化人類学まで幅広く使って、人類の性質について広く浅くまとめられている。人類も環境に適応して進化した一つの生物種なんだなあと改めて感じた。

 第6章「現代の課題」で、人間における格差を基礎代謝量をもとに比べている点が面白い。狩猟採集社会で見られる格差と、一般人のエネルギー消費量格差はどちらも3倍程度で等しい。また、格差について考えるときに、社会の仕組みごとに富の重要性とその世代間継承の度合いが異なっていることが、格差の違いにつながっているという点も面白い。牧畜社会と農業社会は次世代に継承できる物質的富の重要性が高い。一方で、狩猟採集社会と自給農耕社会では、次世代への継承が難しい身体的富(体格など自身の肉体の強さ)と関係的富(地位や他者との関係)の重要性が高い。

 現代の資本主義工業社会では、物質的富の重要性が高く、関係的富も継承できるようになっているため、格差が拡大しやすいのだろう。格差を抑えるために国家の介入が必要だと思う。